老化を防ぐ10のサプリを紹介 Anti-aging
2018年現在、老化は病気と認められていないため、抗老化薬、老化防止やアンチエイジングの「薬」といったものは存在していません。
しかし動物実験の文脈で、さまざまな抗酸化物質の投与やカロリー制限などによって動物の寿命が延長する結果が出ていて、その遺伝子や機構機序の解明も日々進んでいます。
老化は「治療」できるという考え方もそろそろ絵空事ではなくなってきているのかもしれません。
アンチエイジングのサプリメントによるアプローチには、想定される老化の原因によっていくつかに分類できるようです。
・老化細胞の除去
年とともに体の細胞の一部が分裂しないゾンビ細胞となり、まわりの細胞に悪い影響を与えることが老化の原因とする説です。
それに対抗するのが、いわゆる老化細胞除去薬(セノリティクスsenolytics)と呼ばれる物質です。
サプリ成分として、Fisetin, Quercetin+Dasatinib, Piperlongumine などが研究されています。
・サーチュイン活性
サーチュイン遺伝子と呼ばれる長寿遺伝子を活性化すれば老化を防止できるとする説です。
長寿遺伝子を活性化する物質として、NMN、NR、レスベラトロールなどが研究候補となっています。
・慢性炎症防止
老化するにつれ増えてくる慢性炎症が老化関連疾患の原因とする説です。老化細胞が出すSASPの有害性を緩和する成分が研究されています。
・DNA修復
DNAエラーの蓄積を老化の原因とする説です。DNAを安定させる遺伝子を活性化する物質やDNAエラーを防ぐ成分です。酸化ストレスによるDNA損傷を防ぐ抗酸化物質などです。
・テロメア維持
細胞分裂のたびに短くなるテロメアが老化の原因とする説です。
テロメア長を調べた実験で、短くなりにくかった物質を紹介します。
・寿命延長(動物)
動物実験で動物(線虫、魚類、マウス、ラット等)の寿命が延長した物質を紹介します。
・糖化防止
タンパク質の糖化(AGE)が老化の原因とする説で、糖化を防ぐと言われるカルノシンなどの物質が研究されています。
今後、上記に関連するサプリメントを追加していきたいと思います。
老化を防ぐ効果を持つ可能性があるサプリメント成分を、世界の大学や研究機関の論文からエビデンスベースで紹介します。
1)ニコチンアミドリボシド
ニコチンアミドリボシドで6週間処置した老齢マウス(24ヶ月齢)は、対照マウスよりも平均して5%長く生存した。(参照論文 1)
ニコチンアミドリボシドはNAD+レベルを上げ、サーチュイン遺伝子(SIRT1、SIRT3)を活性化させる。(参照論文 2)
2)レスベラトロール
レスベラトロールは、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子、抗老化遺伝子)SIRT1を活性化する。(参照論文 3)
トランスレスベラトロールおよびレスベラトロール類似体は、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子、抗老化遺伝子)SIRT1を活性化する。(参照論文 4)
レスベラトロールはカロリー制限を模倣し、モデル生物で実施された約60%の研究で寿命を延ばすことが示されている。モデル生物に依存してレスベラトロールの寿命効果が大きく変化する(線虫と酵母で効果大、ハエとマウスで効果小)ことを示している。(参照論文 5)
レスベラトロールは、骨粗しょう症、筋肉減少症、メンタルの低下などの老化の影響のいくつかを阻害または逆転させるのに有効である。(参照論文 6)
レスベラトロールで処理した老化細胞は未処理の老化細胞よりも1.3倍から2.4倍テロメアが長かった。ちなみに若い細胞は2.6倍長い。(参照論文 7)
寿命を延ばすカロリー制限の機構と同様に、レスベラトロールはSIRT1を活性化し、関連するエネルギー利用およびインスリン感受性の改善をする。(参照論文 8)
酵母では、レスベラトロールはSir2を刺激し、DNA安定性を高め、カロリー制限を模倣することによって、寿命を70%延長させる。(参照論文 9)
レスベラトロールは魚類の寿命を延長させる。(参照論文 10)
レスベラトロールはマウスの寿命を延長させる。(参照論文 11)
レスベラトロールは、酵母、線虫、ハエ、蜂、魚類、およびげっ歯類の寿命を延ばす。(参照論文 12)
レスベラトロールは、SIRT1/NF-κBシグナル伝達経路を介してSASPを阻害することにより、魚(N.guentheri)の老化を遅らせることを示唆している。(参照論文 13)
3)クルクミン
クルクミンは、高齢者の健康状態を改善することができる強力な抗酸化剤および抗炎症剤である可能性がある。(参照論文 14)
クルクミンは、酸化(ROS)と炎症(IL-1, IL-6, TNF-alpha)を抑制することによって老化を遅らせ、加齢関連疾患の発症を延期できる可能性がある。(参照論文 15)
クルクミンはショウジョウバエの平均寿命と最大寿命を25.8%増加させた。オス(0.5mg/g投与で15.5%延長)のクルクミンの最適用量は、メス(1mg/g投与で25.8%延長)よりも低かった。(参照論文 16)
クルクミンはその抗酸化作用により線虫の寿命を延長する。(参照論文 17)
クルクミンは年齢関連遺伝子の発現レベルを下げ、ハエの健康寿命と最大寿命を延長する。(参照論文 18)
クルクミンはカロリー制限(食餌制限DR)と同じ経路を介して、ハエの寿命を延長する。(参照論文 19)
6)NMN
長期間のニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の投与は、マウスの加齢に伴う生理学的低下を緩和する。NMNは加齢関連体重増加、エネルギー代謝の増強、身体活動の促進、インスリン感受性および血漿脂質プロファイルの改善、および眼機能および他の病態生理の改善をし、重要な代謝臓器における年齢関連遺伝子発現の変化および骨格筋におけるミトコンドリア酸化代謝および核内タンパク質の不均衡を改善した。NMNの多くの効果は、ヒトにおける効果的な老化防止介入としての予防的および治療的可能性を示している。(参照論文 22)
7)カルノシン
カルノシンは抗酸化および抗グリコシル化特性を有し、老齢ラットにおいて、加齢の病因に重要な役割を果たす糖化最終生成物(AGE)およびマロンジアルデヒド、タンパク質カルボニル、進行した酸化タンパク質産物レベル、ならびに血清および肝臓における活性酸素種形成を有意に減少させることが観察された。(参照論文 23)
2型糖尿病のモデルラットにおいて、カルノシンは、腎臓における酸化ストレスおよび糖化最終産物(AGE)の蓄積を減少させる。(参照論文 24)
2018年4月の終わりまでのカルノシン論文について国際的な情報源を検索し、基準を満たした36の研究において、2つの研究を除いて、カルノシンが抗糖化特性を有し、タンパク質カルボニルの形成および還元された糖によって誘導される架橋を妨げる可能性があることを示している。しかし、人間の研究はほとんどなかった。カルノシンがAGEsの形成を妨げるメカニズムは、さらなる研究が必要である。(参照論文 25)
8)フィセチン
フィセチンは、正常細胞に影響を与えずに、老化細胞を選択的に減少させるセノリティック(senolytic、老化細胞除去)活性を持っている。フィセチンは老化マウスの健康寿命と生存寿命を延長する。(参照論文 26)
フィセチンは、多くの天然ポリフェノールと同様にサーチュイン遺伝子(Sirt1)を活性化し、下等生物の寿命を延ばす。(参照論文 27)
- 参照論文1 : NAD+ repletion improves mitochondrial and stem cell function and enhances life span in mice. (2016年)
- 参照論文2 : The NAD+ precursor nicotinamide riboside enhances oxidative metabolism and protects against high-fat diet induced obesity (2012年)
- 参照論文3 : Evidence for a Common Mechanism of SIRT1 Regulation by Allosteric Activators (2013年)
- 参照論文4 : Small molecule modulation of splicing factor expression is associated with rescue from cellular senescence (2017年)
- 参照論文5 : Resveratrol and Lifespan in Model Organisms. (2016年)
- 参照論文6 : Resveratrol and health--a comprehensive review of human clinical trials. (2011年)
- 参照論文7 : Small molecule modulation of splicing factor expression is associated with rescue from cellular senescence (2017年)
- 参照論文8 : Resveratrol vs. calorie restriction: data from rodents to humans. (2013年)
- 参照論文9 : Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. (2003年)
- 参照論文10 : Resveratrol prolongs lifespan and retards the onset of age-related markers in a short-lived vertebrate. (2006年)
- 参照論文11 : Resveratrol improves health and survival of mice on a high-calorie diet. (2006年)
- 参照論文12 : Lifespan and healthspan extension by resveratrol. (2015年)
- 参照論文13 : Resveratrol reduces senescence-associated secretory phenotype by SIRT1/NF-κB pathway in gut of the annual fish Nothobranchius guentheri. (2018年)
- 参照論文14 : Curcumin, inflammation, ageing and age-related diseases. (2010年)
- 参照論文15 : The promise of slow down ageing may come from curcumin. (2010年)
- 参照論文16 : Curcumin-supplemented diets increase superoxide dismutase activity and mean lifespan in Drosophila. (2013年)
- 参照論文17 : Curcumin-mediated lifespan extension in Caenorhabditis elegans. (2011年)
- 参照論文18 : Curcumin extends life span, improves health span, and modulates the expression of age-associated aging genes in Drosophila melanogaster. (2010年)
- 参照論文19 : Curcumin is an early-acting stage-specific inducer of extended functional longevity in Drosophila. (2013年)
- 参照論文20 : Lutein extends the lifespan of Drosophila melanogaster. (2014年)
- 参照論文21 : Epigallocatechin gallate, the major component of polyphenols in green tea, inhibits telomere attrition mediated cardiomyocyte apoptosis in cardiac hypertrophy. (2013年)
- 参照論文22 : Long-Term Administration of Nicotinamide Mononucleotide Mitigates Age-Associated Physiological Decline in Mice (2016年)
- 参照論文23 : Antiglycation and anti-oxidant efficiency of carnosine in the plasma and liver of aged rats. (2017年)
- 参照論文24 : Effect of Carnosine on Renal Function, Oxidation and Glycation Products in the Kidneys of High-Fat Diet/Streptozotocin-Induced Diabetic Rats. (2017年)
- 参照論文25 : Carnosine and advanced glycation end products: a systematic review. (2018年)
- 参照論文26 : Fisetin is a senotherapeutic that extends health and lifespan (2018年)
- 参照論文27 : Biochemical Effects of SIRT1 Activators (2010年)
- 参照論文28 : Pyrroloquinoline quinone increases the expression and activity of Sirt1 and -3 genes in HepG2 cells. (2015年)
- 参照論文29 : Pyrroloquinoline quinone enhances the resistance to oxidative stress and extends lifespan upon DAF-16 and SKN-1 activities in C. elegans. (2016年)
- 参照論文30 : Folic acid supplementation at lower doses increases oxidative stress resistance and longevity in Caenorhabditis elegans (2015年)